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院長執筆新聞掲載記事集

新聞・雑誌などに掲載された院長執筆掲載記事です。
       
2007200620042003200220011999199419931992

記事見出し

1992-1 産後から頭痛・腰痛が続いています

1993-1 流産し胞状奇胎、早く子供がほしいのですが

1993-2 閉経後の膣炎に悩んでいます

1994-1 良性の卵巣嚢腫、手術は必要でしょうか

1994-2 成人の娘が1年以上も無月経

1994-3 乳首から分泌物が時々出るのですが

1994-4 カンジダ膣炎の再発繰り返すのですが

1999-1 妊婦を襲う「人食いバクテリア」の真相とは?

2001-1 子宮内膜増殖症の組織検査に不安

2002-1 自然生薬の力でオーダーメードの健康管理

2002-2 長期の女性ホルモン療法に課題→リスク知り、治療選ぼう

2003-1 娘が卵巣嚢腫、半年後再び検査
         
2003-2 若い女性の子宮けいがん急増、10年で4倍!!性感染症が一因か

2003-3 子宮頸がん 若年化傾向

2003-4 ‘子宮がん、若年層に広がる‘ 出産への影響も、背景には性の低年齢化

2004-1 『火照りやフワフワ感』があるのですが

2006-1 「子宮内膜症」とは?

2007-1 「子宮内膜症」 Q&A特集

2007-2 子宮頸がん 20代から検診を

 


1992
1992.12.28 中国新聞:問診票
産後から頭痛・腰痛が続いているが・・・
  精神的ストレス軽減し 薬で内分泌の正常化を
【問い】産後1ヶ月、家業のせいもあって来客が多く、体調が悪くても床に就いておられませんでした。このため、頭痛や目のかすみ、手足の関節痛、腰痛などが続いています。4ヶ月たっても症状がよくならず、医師からホルモン剤の使用を勧められました。母乳が出にくくなるということですが、使用すべきでしょうか。また、家庭療法などこれから心掛けることを教えてください。
(広島市中区 主婦・29歳)
【お答え】ご質問は、頭痛、目のかすみ、手足の関節痛、腰痛などの体の変調が産後4ヶ月続いているが、このままにしていて将来に影響はないか、ということだと思います。産後、体に現れるさまざまな症状と治療法について簡単に述べてみます。
 産後は胎盤の娩出(べんしゅつ)や乳汁分泌などで内分泌環境が急激に変化するため、間脳視床下部の自律神経中枢に機能異常が起こりやすく、また育児に対する責任感などから精神面でも不安定となる傾向があります。
 産褥(さんじょく)期は更年期に次いで自律神経失調症が起こりやすく、頭痛、肩こり、腰痛、疲労感、目のちらつき、手指のしびれ感などの不定愁訴(自律神経症状)が現れます。ひどい場合は情緒不安定になったり、うつ状態になってしまったりします。
 治療法としては、基本的には産褥期という生理的、情緒的に不安定な状態を上手に乗り切ることにあると思います。ご主人、ご家族に協力してもらい、肉体的精神的なストレスを軽減するように努めてください。
 薬物療法としては、ホルモン剤で月経を起こし、内分泌環境を整える方法があります。
 最近は漢方医学の普及とともに、ストレスによる間脳下垂体系の内分泌異常や、自律神経系の機能異常による種々の不定愁訴に漢方が応用され、治療効果も認められています。
 母乳を続けたいというご希望もあり、漢方治療も一つの方法ではないかと思います。
 家事や育児などで忙しく、ご自分の症状を我慢しておられるようですが、症状が固定してしまわないうちに適切な治療を受け、すこやかに産褥期を乗り切ってください。ご心配のように将来に影響を残すことはないと思います。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1993
1993.3.29 中国新聞:問診票
流産し胞状奇胎、早く子供がほしいが・・・
  絨毛がんの発生は減少 医師に早期妊娠相談を
【問い】昨年2月に第2子を流産、胞状奇胎と診断されました。医師から2年間は妊娠は無理だと言われたのですが、子どもがほしくてたまりません。その後の検査で肉体的には異常もなく、基礎体温も安定しています。それでも妊娠は無理でしょうか。無理だったら、その理由とリスクなども教えてください。
(東広島市 主婦・25歳)
【お答え】ご質問は、胞状奇胎流産後に担当医から2年間の避妊を指導され、現在まで1年経過しているが、妊娠はまだ許可されないか、ということだと思います。胞状奇胎流産後の問題点と妊娠許可に時期について簡単に述べてみます。 胞状奇胎そのものは良性病変ですが、その2%程度に絨毛(じゅうもう)がんが続発するといわれています。絨毛がんが発生するまでの期間は多くは3年以内ですが、ときには10年以上経過して発生する例もあります。
 胞状奇胎を経験された方は、絨毛がんの早期発見と発生予防のためにきちんとした管理を受ける必要があります。今日では管理方式の普及に伴い、奇胎後の絨毛がんの発生は減少傾向にあります。
 胞状奇胎の管理は、絨毛細胞から分泌される絨毛性ゴナドトロピン(hCG)値の推移を追跡して行います。hCG値が順調に下降しない場合や下降しても再上昇する場合には精密検査を行い、病巣の程度により適切な治療を行います。
 妊娠許可の時期については、以前は一般に2年間は避妊すべきとされていました。
 その理由として、奇胎後に悪性変化がおこった場合と、正常妊娠がおこった場合との区別がつかないこと、早く妊娠すると悪性化をおこしやすいことなどが挙げられていました。
 しかし、今日では検査法の進歩により悪性変化と正常妊娠の区別がつくようになり、とくに早期に妊娠しても悪性化の頻度はほとんど差がないことが認められています。
 今回の胞状奇胎後にhCG値が順調に基準値まで下降し、さらに基礎体温が2相性周期(排卵性周期)を3周期以上繰り返していれば、妊娠してもよいと思います。
 担当医に現在の状態と妊娠の可否について相談してください。今後とも定期的な検診は必要と思います。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1993
1993.5.31 中国新聞:問診票
閉経後の膣炎に悩む・・・
  主原因はホルモンの低下 投薬で補う治療が一般的
【問い】ここ10年、おりもので困っています。量は多くありませんが、ねばっこいもので、時間がたつと肛(こう)門の方に流れてその周りが赤くなって痛くなります。仕事先でもお湯で洗っています。病院で洗浄してもらい薬を服用すると少しよくなっていましたが、なかなか治らず毎日がゆううつです。いい方法があれば教えてください。
(広島市・会社員・62歳)
【お答え】ご質問は、10年前から淡黄色の膣帯下(ちつたいげ)という分泌物があり、放置すると帯下の刺激で肛門周囲が赤くなって痛む。治療を受けるといったん良くなるが、しばらくすると再発を繰り返す。完治しないものだろうか、ということだと思います。閉経後の婦人にみられる膣炎の特徴と治療法について簡単に述べてみます。
 閉経後の婦人は卵巣機能が低下し、膣粘膜が萎縮し、膣炎を起こしやすくなります。これを閉経後萎縮性膣炎とよんでいます。膣炎による帯下を自覚しない方もありますが、帯下による刺激や過敏、掻(か)くことなどにより膣入口部やその周囲に炎症や糜爛(びらん)、潰瘍(かいよう)を生じることもあります。
 帯下の量や性状は個人差があり、量が少なくて淡黄色の場合、量が比較的多くて緑黄色の場合などいろいろですが、ときに淡紅色ないし血性をおびることもあります。膣トリコモナスなどによる二次感染があると性状も異なってきます。
 診断には、膣炎の状態を観察して帯下の顕微鏡検査、培養検査を行い、がんの存在を否定するために膣内容や炎症部分の細胞診検査も行います。
 治療には、一般に女性ホルモンであるエストロゲン剤の入った膣錠、内服剤を10日ないし2週間使用します。膣炎の程度によってはさらに投与期間を増やします。肝障害や乳がん・子宮体がんの既往などで、エストロゲン剤の反復使用が好ましくない場合には「八味地黄丸」などの漢方薬を用います。トリコモナスやカンジダ、細菌、ウィルス感染などを合併している場合にはそれらに対する治療も行います。
 はじめに述べましたが、閉経後の萎縮性膣炎は女性ホルモンが低下することが主な原因ですので、ご相談のように治療後半年ないし1年で、再び膣炎を繰り返す場合があります。
 定期的に診察を受け、担当医にホルモン剤の予防的投与についても相談してください。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1994
1994.3.28 中国新聞:問診票
良性の卵巣嚢腫 手術は必要か・・・
  60歳以上で悪化の恐れ 時機を見て切除がベター
【問い】卵巣嚢腫(のうしゅ)で産婦人科にかかっています。また子宮筋腫もあります。昨年来、卵巣のはれた状態が続き、腫瘍(しゅよう)マーカーで検査しています。今回、悪性になったらいけないので都合のよい時機に手術を、と勧められましたが迷っています。
(広島市西区 主婦・44歳)
【お答え】ご質問は、40歳のころより44歳の現在まで右側の卵巣にピンポン玉くらいの卵巣嚢腫があり、良性とのことで定期的な検査を受けているが、将来の悪性化を考慮して卵巣の手術をした方が良いのか、また手術によってどのような障害が生じるのかということだと思います。そこで卵巣の手術に対する基本的な考え方と術後の問題点について簡単に述べてみます。
 卵巣嚢腫の大きさが鶏卵大以下(直径6cm以下)で超音波検査などの画像診断や腫瘍マーカー値に異常所見がなければ、最初1-3ヶ月後、以後3-6ヶ月ごとに再検査して経過観察。そして腫瘍が増大するようであれば手術を行います。
 大きくならなくても、嚢胞腺腫(良性)であれば年齢が進むにつれて低悪性度(良性と悪性の中間)になったり、腺がんの発現頻度が高くなることや、類皮嚢胞腫(良性)でも60歳以上で悪性化の頻度も高くなるので、将来を考慮して都合に良い時機に手術することを勧めます。あなたの場合、ここ1年余り嚢腫の増大はないようですが、嚢胞腺腫の可能性がありますので時機をみて手術を受ける方が良いと思います。
卵巣の手術は、卵巣機能の面からみれば、健常部を少しでも残す機能温存手術が原則です。しかし、その必要がない老年期や腫瘍がこぶし大以上で健常部がない場合や術中の病理組織検査で低悪性度やがんの場合は卵巣摘出を行います。
 あなたの場合は機能温存する嚢腫切除術が適応と思いますが、その際の問題点としては残存卵巣の将来の悪性化(明確な結論はないが1%以下の頻度)のことです。ときに下腹部痛や性交障害を自覚することもあります。もしも卵巣摘出が必要な場合は、術後にホルモン剤投与で卵巣欠落症状や骨粗鬆(しょう)症を十分防止できます。
 担当医に手術の時機についてよく相談してください。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1994
1994.9.12 中国新聞:問診票
成人の娘が1年以上も無月経・・・
  不妊症を招くおそれあり 早めに再検査と治療を
【問い】娘は来年で22歳になりますが、生理がありません。身長は170cmです。いろいろ手を尽くしたのですが、好結果は得られず、娘は病院に行く意欲をなくしています。このままだと、大変なことにならないかと、非常に心配しています。
(広島県豊田郡 主婦)

【お答え】ご質問は娘さんが中学1年で初経があり、高校2年くらいまでは毎月ではないが月経があったが、その後無月経になった。18歳になってから注射で月経をおこす治療を1年くらい続けたが月経痛でやめ、その後は投薬治療を半年くらい受けた。このままで将来問題はないかということだと思います。
 一般に、思春期におこる続発性無月経(3ヶ月以上月経のないもの)は一過性で、生理的範囲ものが多いのですが、中には重症化し将来の妊孕(にんよう)性に問題を残す例もあります。
 思春期続発性無月経は、無月経に至った原因が特定できない原因不明例が最も多く、続いてダイエットなど減食による体重減少性、受験・環境変化・悩みなどのストレス性などの順です。
 無月経の程度は、原因不明例ではおおむね軽症例(第T度無月経)が多く、一方、体重減少性無月経は重症(第U度無月経)が多く、ストレス性無月経はその中間です。
 初経後の月経状態との関係では、初経以後月経が順調だったものが、軽症の第T度無月経になった場合、治療後の予後はよいのですが、無月経に至るまでの月経が不順であった場合は治療後、正常月経になるのは約30%です。また、無月経の期間が1年を超える無月経は重症の第U度無月経が多くなり、放置すると予後が悪く将来治療が難しい不妊症になる恐れがあります。
 現在21歳で、無月経期間が1年以上であることから、詳しい検査と治療が必要と思います。治療でおこす月経による痛みは薬剤でコントロールできます。ある程度の治療期間が必要ですが、早期に治療を開始することが一番大切であると考えます。もう一度、産婦人科専門医に相談されるとよいでしょう。

(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1994
1994.9.26 中国新聞:問診票
乳首から分泌物が時々出る・・・
  血が混じっている場合 乳がんの検査を受けよう
【問い】子宮筋腫(しゅ)の手術をして2年になります。最近になって、両乳首から透明性の分泌物が時々出ます。胸にしこりはないか、自分で確かめていますが、今のところ異常はないように思います。乳がんの心配はないでしょうか。
(広島市安佐南区 主婦・48歳)
【お答え】子宮筋腫の手術後に卵巣欠落症状や更年期障害があり、女性ホルモン剤を服用していれば乳首から分泌物が見られることはあります。しかし、一般に子宮筋腫の手術が原因で乳首から異常な分泌物が出ることはありません。そこで、乳首からの異常分泌物と乳がんとの関係について簡単に述べてみます。
 乳首からは、いろいろな分泌物が出てきて下着を汚すことがよくあります。透明な液体、乳白色の液体、少し黄色みをおびた液体などのほかに血液が混じった薄茶色や血液そのものが出てくることがあります。
 これらの分泌物は、続けて分泌する場合と、一度分泌物があり、なくなったと思ったらまた分泌している場合があります。
 透明な液体や乳白色の液体が出てきてもほとんど心配する必要はありませんが、血液の混じった液体が出てくる場合は要注意です。乳首から出血がある場合、乳がんであることが少なくない(20〜30%)からです。
 中には見た目は血性と思えず、検査によって初めて潜血反応の出るケースもありますので、明らかな血性分泌物でない場合でも、必ず専門医を受診して、その原因を明らかにしなければなりません。
 分泌物は潜血反応を調べ、分泌物の細胞診を行って検査します。分泌物のCEA=腫瘍(しゅよう)マーカーの一つ=測定も、がんとの鑑別に有用です。さらに乳管内に造影剤を入れて撮影する乳管造影を行いますが、最近では乳管内にファイバ―スコープをいれて病巣を直接見る乳管内視鏡も考案され、生検(病理組織検査)もできます。
  乳がんで異常分泌物がみられる場には、ごく早期のがんであることがほとんどです。この貴重なサインを見逃さずに、早く専門医の診察を受けることをお勧めします 。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1994
1994.12.19 中国新聞:問診票
カンジダ膣炎の再発繰り返す・・・
  局所療法や経口剤併用 パートナーにも配慮
【問い】カンジダ膣(ちつ)炎にかかり悩んでいます。6年前、独身のときにかかり毎日洗浄してもらい、治るのに2ヶ月かかりました。3年前に再発。その後、再発を繰り返しています。予防の仕方や、体質改善法、飲み薬などについて教えてください。
(廿日市市 主婦・31歳)
【お答え】一般にカンジダ膣炎は、治療開始後すみやかに症状が改善することが多いのですが、中には十分な治療効果が得られない例もあります。そこで再発を繰り返すカンジダ膣炎の発症要因と治療上の問題点について簡単に述べてみます。
  カンジダはまったく健康な婦人にも常在菌として生息している真菌(カビの一種)で、膣炎症状のない婦人でも約10-15%くらい検出されます。したがって、カンジダ菌が検出されたからといってそれがすぐカンジダ膣炎を意味するのではありません。菌の過剰増殖やそれに伴う特有な酒粕(かす)ようの帯下(こしけ)、掻痒(そうよう)感などの炎症症状がみられる場合にカンジダ膣炎と診断して治療します。
  再発を繰り返す要因としては、まずカンジダ菌腫の変化があります。最近は耐久性が強く、抗真菌剤の感受性も低い菌腫(カンジダグラブラータ)が増加しています。
  また腸管内のカンジダが糞(ふん)便、会陰を介して膣に自己感染していることもあります。そのほかに糖尿病、免疫疾患、妊娠や抗生剤、副腎(じん)皮質ホルモン剤、エストロゲン剤、ピルの使用がカンジダの増殖を促進して再発を繰り返すことがあります。
  治療上の問題点としては、カンジダは性行為によっても感染するため、特に再発を繰り返す場合にはパートナーにも抗真菌軟膏(こう)を陰茎に塗ってもらうことが必要です。
  抗真菌膣錠や軟膏による局所療法で十分な効果が得られず、糞便中の腸内カンジダが原因と思われる場合には、経口抗真菌剤を併用します。薬剤の治療効果が芳しくない場合には原因菌を菌腫まで確認することも必要です。
  下着類は通気性や吸湿性のよいものを着用し、食事は偏食を避け、過剰な糖分摂取を控えるように留意してください。治療中は夫婦生活を避け、手指なども清潔に保っておけば、ご家族に感染することはないでしょう 。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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1999
1999.08.21 リビングひろしま
妊婦を襲う「人食いバクテリア」の真相とは?・・・
  極端に低い発病率、冷静な対応を
国立呉病院・中国がんセンターの藤井恒夫医師に聞く
  ご読者から、「最近、"人食いバクテリア"の話を聞きます。患者は平均年齢が33歳で、妊娠後35〜37週目に陣痛を伴って症状が始まるケースがほとんどだそうです。私は34歳で30週目を向かえていますが、大丈夫でしょうか」(MKさん/安佐南区)と心配する手紙が寄せられました。早速、県立広島病院婦人科に問い合わせると、「同様の質問が妊婦の方から何件か受けた」との返答。MKさんと動揺に不安を抱いている人が結構いるようです。
  事の発端は、週刊誌の「人食いバクテリアとは何か」というショッキングな記事(一部のテレビ局でも放映)。「発病すると筋肉と皮下組織を壊死させ、重い敗血症で死をもたらす病原菌」のことで、A群溶血性連鎖球菌(以下、A溶連菌)と呼ばれています。全国で16人の妊婦がA溶連菌が原因と見られる劇症型感染症に陥り、12人が死亡。ほぼ全員が分娩後7時間以内に亡くなっていると報じています。
  A溶連菌の発病は今に始まったことではなく、すでに平成9年に日本産科婦人科学会で報告されています。風邪のような症状から扁桃腺や咽頭の腫れが10日以上続き、その後吐き気と発熱が加速的に増して早産。母子共に死亡するケースが3例あったということです。
  今のところ、 A溶連菌について情報量が少ないため、恐怖感や不安感が一人歩きしています。現在までに分かっていることや、広島県の状況について、国立呉病院・中国がんセンター産婦人科の藤井恒夫医師に話を伺いました。
  「溶血性連鎖球菌にはA群とB群があり、B群は妊婦の膣(ちつ)から時たま検出される場合もありますが、ペニシリンなどの抗生物質を投与すれば、母子ともに問題ありません。一方、今回問題のA群溶連菌は、昔から扁桃腺や咽頭炎でみられた菌で、B群同様に抗生物質の投与で治ります。劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症を発病した妊婦を調べてみると咽頭炎が先行しており、さらに同居している家族からも同様の菌が検出されています。従ってこの患者はもともと保菌者であり、妊娠になって免疫機能が低下した時、劇症型感染症になったものと考えられます。」
  今年4月以降では、全国で6件の劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症が報告されていますが、すべて男性や子供による合併症で、妊婦への発病はみられていません。
  「広島県では年間約2万8000人の赤ちゃんが生まれていますが、劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症による母子の死亡は報告されていません。発病の割合は極端に低く、心配ないでしょう。ただ注意は必要で、咽頭炎や咽頭の腫れが続くときは、念のため専門医に相談を」と藤井先生。むしろ、妊婦の抱える合併症として、エイズや梅毒、淋病、クラミジアなどの方が数的に問題のようです 。
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2001
2001.08.26 中国新聞:気になる症状
子宮内膜増殖症  組織検査に不安・・・
  全身麻酔し10分で終了
昨年8月、生理の後が切れず、少量のおりものがあり、子宮内膜増殖症と診断されました。今年3月の検査で細胞に異常が見られたので、組織検査として、子宮内膜を全部引きかいてみると言われました。命にかかわるような検査でしょうか。がんなのでしょうか。
(呉市・主婦・51歳)
■子宮内膜増殖症とはどのような病気ですか
  子宮の内側の膜(子宮内膜)の細胞が過剰に増殖するのです。8割強の人に、月経時以外の不正出血がみられます。年齢別では40代がピークで、次いで30代、50代です。原因には女性ホルモンが関係していると考えられます。ほとんどは心配ないのですが、一部、子宮内膜がんになる恐れがあります。図の表示
■がんになるのはどれくらいの割合ですか

  内膜の上皮細胞に異型(異常型)があると、子宮内膜異型増殖症と診断されます。さらに内膜の、分泌物を生成する腺構造の異常の程度を調べて、単純型と複雑型に分けます。要注意なのは複雑型と異型を伴った増殖症で、がんになる頻度が高く、約20%です。異型があっても単純型の増殖症では約8%です。
■組織検査とは

  子宮鏡を併用しつつ、袋状になった子宮の中から内膜を取り出し、顕微鏡で見て異型がないか、複雑型かどうかを調べます。全面宗掻爬(そうは)と言って、内膜を全部取り出すのは、ちょっとでもがんが隠れていたら困るからです。痛いので全身麻酔をしますが、命にかかわるような検査ではありません。麻酔をかけ始めて約10分で終わります。
■治療はどのように

  複雑型と異型を両方伴った内膜増殖症は、がんとの区別が難しく、がんに準じて治療します。手術療法と薬物療法があり、薬物療法では女性ホルモンに拮抗(きっこう)作用がある黄体ホルモンを半年間、毎日600mg内服し続ける治療法が有効です。ただ長期服用によって血栓症が起こりやすくなるのでチェックも必要です。自験例では複雑型異型増殖症の5人にこの治療法を行って、いずれも治療開始2ヵ月後に消失しました。
  相談された方の場合、どのタイプの増殖症かをはっきりさせるため、全面掻爬の検査を受けられることをお勧めします 。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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2002
2002.01.12 中国新聞:漢方市民公開講座

  自然生薬の力でオーダーメードの健康管理
  
更年期からの漢方・・・西洋薬との併用で「幸年期」にしよう

高齢化や食生活の多様化などにより生活習慣描が増えるなか、漢方薬の効果が見直されています。このほど広島市中区の広島県民センターで開催した「漢方市民公開講座」(主催=中国新聞社、後援=広島県医師会・広島市医師会、協賛=株式会社ツムラ)では、広島市病院事業局長・広島大学名誉教授の原田康夫氏が「わかりやすい漢方」と題して基調講演し、3人の専門医が効能や症例に応じた漢方薬の使い方などを幅広く紹介しました。
国立病院機構呉医療センター中国がんセンター産婦人科医長 藤井恒夫 先生

■更年期からの漢方・・・西洋薬との併用で「幸年期」にしよう

  閉経をはさんだ約10年間を更年期といい、成人病や骨粗しょう症の予防や対策が必要になってきます。その中で、副作用の問題など西洋医学で治療しにくい症状や疾患に漢方が期待されています。
  更年期障害は女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少により起こるため、一般的には西洋薬でホルモンを補充して治療します。ですが、既往の方を含め、乳がんや卵巣がんの患者さん、心臓、腎臓、肝臓に疾患のある方、高血圧症や糖尿病の方には長期間のホルモン補充は好ましくないケースがあります。マイルドに効き、体全体の調子を上げていく漢方薬はこうしたケースにも効果的なのです。
  更年期障害に効き、健康保険に適応する漢方薬は17種類あり、加味逍遥散や当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などが代表的です。これらの漢方薬は体格や体質、その時の症状に合わせて使いますが、1〜2週間で効果が見られないようなら別のものに変えるべきです。専門医に相談のうえ、自分に合う漢方薬を選ぶようにしてください。
  高血圧や糖尿病、頻尿には八味地黄丸がよいでしょう。女性だけでなく男性にもおすすめします。くしゃみやせきなどの際に尿が漏れる尿失禁には、骨盤底の筋肉を強くする補中益気湯や葛根湯などがおすすめです。骨粗しょう症の予防には、当帰芍薬散や桂枝茯苓丸が効果的。西洋薬とうまく併用することも大切で、卵巣を摘出した女性には活性型ビタミンDと桂枝茯苓丸を併用することで効果を上げた例もあります。またがん患者のQOL(生活の質)を高める補剤としても漢方が見直されており、抗がん剤などの副作用を抑える役割も果たしています。上手に使い分けることで、更年期を「幸年期」にする薬、それが漢方薬なのです。
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2002
2002.01.12 中国新聞:特報2002

長期の女性ホルモン療法に課題・・・  
  リスク知り 治療選ぼう 
  不安がらず医師に相談、
乳がん検診は定期的に

閉経期前後の女性に女性ホルモンを投与することで、生活の質を高めるホルモン補充療法(HRT)。しかし、長く続けると、乳がんや心疾患、脳卒中の危険が高まるーとする米国立衛生研究所(NIH)の調査結果が発表され、医療現場に波紋を広げている。いたずらに不安がるのではなく、治療がもたらすメリットとデメリットについて、主治医と話し合うきっかけにしたい。
(編集委員・山内雅弥)
  更年期を迎えると、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に減るために、のぼせや発汗、不眠などの症状や骨粗しょう症、動脈硬化など、さまざまな体の変化が表れる。足りないエストロゲンを薬で補うことで、つらい症状を改善するのがHRTだ。アルツハイマー病の予防にも効果があるなど、女性に福音をもたらす画期的な治療とされている。
  エストロゲンを長く投与した場合、子宮体がんの発生頻度が高まることが分かり、子宮がある女性にはエストロゲンと、体がんを防ぐためのプロゲスチン(黄体ホルモン)を併用している。子宮を摘出している場合には、エストロゲン単独で使用される。
普及これから
  HRTは1970年代以降、欧米で盛んに行われるようになり、米国では600万人の女性が、更年期症状の緩和や長期の健康維持の目的で治療を受けている。一方、日本では十分に理解されていないこともあって2%程度にとどまり、普及はこれからの段階だった。
  今回の調査結果は、「HRTを5−10年以上続けると、乳がんを多少増加する」という従来の報告を確認。脳卒中や虚血性心疾患も増える半面で、大腸がんや骨折は減ることを示している。
  新聞紙上で報道された10日以降、約300人がHRTを受けている広島市中区の河野産婦人科クリニックにも、新聞を読んで心配になった」 「このまま薬をのんでも大丈夫か」などの問い合わせが相次いだ。
  河野美代子院長は「HRTを受けている人は、定期的に乳がん検診をしているので、かかっても早期で発見され、治る率も高いといわれている。続けるかどうかは自ら決めることだが、不安な人には調査結果をよく説明したい」と話す。
利点多い短期
  臨床試験に当たった米国のグループは「エストロゲンとプロゲスチンの併用療法を受けている女性は、主治医と話し合うべきだ。更期症状を和らげる短期治療なら、利点がリスクを上回り、継続は妥当。疾病予防の目的で長期間服用している場合は、評価し直す必要がある」としている。
  日本の専門家は、どう受け止めているのか。   国立病院呉医療センター・中国がんセンターの藤井恒夫・産婦人科医長は「実際に害となる疾患を発症する人の数は非常に少ないが、治療年数によって増えることが示された。これまでも言われてきた乳がん増加の可能性が、大規模試験で確認されたことから、個々の患者さんに応じた薬剤の種類や量、期間を選択べきだろう」とみる。現在HRTを受けていたり、考え手いる女性には、「いたずらに心配せず、主治医とよく話し合って」と勧める。
  「乳がんは従来から指摘されていたので、日本でも十分に対応してきている。特に長期間治療を受けている人は、乳腺エックス線撮影を含めた乳がん検診を、年一回は受けてほしい。心臓血管疾患については、肥満や喫煙などの背景が米国とは異なり、今回のデータをそのまま日本人に当てはめることはできない」と指摘するのは、日本更年期学会理事を務める広島大学医学部附属病院産婦人科の大濱紘三教授。
  「今回の結果は、ホルモン治療自体に問題があるとしているわけではない。高齢社会を迎えて、女性が生活の質を高めるために、HRTはもっと取り入れていくべきだと思う。明らかになったリスクも踏まえて、自らの希望に合った治療法を、主治医と話しながら使い分けていけばいいのではないか」とアドバイスしている。

・・・・・・・・・・・・・・・≪米研究所の調査結果≫・・・・・・・・・・・・・・・・・
  米国の健康な閉経後女性16万1000人を対象に進めている大規模臨床試験の一環として、ホルモン補充療法の有無と、がんなど慢性疾患の関係を調べる目的で行われた。
  50-79歳の女性1万6608人について、エストロゲンとプロゲスチンを併用して毎日服用する補充療法グループと、ホルモンを含まない偽薬を服用してもらうグループに無作為に振り分け、条件を同じにして期間中の各疾患の発生率を統計的に分析した。観察期間は5.2年間。
  1万人当たりで見ると、補充療法グループは偽薬グループに比べ、1年間に乳がんを発症する人が8人多かったほか、心臓の冠動脈疾患が7人、脳卒中が8人、肺塞(そく)栓が8人上回った。逆に、大腸がんは6人、大腿骨頸部骨折も5人少なかった。全死亡の差は認められなかった。
  この結果を受けて、エストロゲンとプロゲスチンを併用した臨床試験は「リスクが利益を上回る」として中止。乳がんの増加がなかったエストロゲン単独の臨床試験は、2005年まで継続されている。

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2003
2003.02.11 中国新聞:気になる症状
娘が卵巣嚢腫  半年後 再び検査・・・
  肥大する前に切除を
25歳の娘が、腹部の超音波検査で脂肪の塊があると言われ、卵巣嚢腫(のうしゅ)と診断されました。()しばらく様子を見ましょう」と言われ、半年後にまた検査に行きます。嚢腫はなぜできるのでしょう。食生活やストレスと関係がありますか。
(広島市中区・主婦・52歳)

■卵巣嚢腫とはどのような病気ですか
  卵巣の上皮で分泌された液体(漿(しょう)液など)がたまったり、卵巣内に発生した固形物を含んで、卵巣の一部に袋状の腫瘍が出来る病気です。発生のメカニズムはよく分かっていません。食生活やストレスとはあまり関係はないようです。 通常、卵巣嚢腫は良性ですが、長く放置すると悪性化することがあります。良性の卵巣腫瘍(しゅよう)のうち、卵巣嚢腫が約80%を占め、そのほとんどが、漿液性嚢胞腺腫(のうほうせんしゅ)と、漿液より粘っこい液がたまる粘液性嚢胞腺腫、皮様嚢胞腫の3つです。相談者は脂肪の塊があるので皮様嚢胞腫と思われます。
■皮様嚢胞腫とは
  脂肪のほか、歯や毛髪など人体組織の一部を含んでいます。20,30歳代に多く、両側の卵巣にできることがあります。妊娠時によく見つかります。自然に消えることはなく、個人差はありますが、徐々に大きくなります。悪性化する可能性は漿液性嚢胞腺腫が一番高く、次いで粘液性嚢胞腺腫で、皮様嚢胞腫は1%以下と言われています。図の表示
■ずっと今のままにしておくとどうなりますか
  悪性変化をはじめ、卵巣と子宮をつなぐ、じん帯と血管がねじれて下腹部に激痛が起こる茎捻転や、はれた卵巣が腸と癒着したり、破裂して腹膜炎になったり、細菌感染などを引き起こすことがあります。茎捻転が重症になるとショックで倒れ、緊急手術が必要なときもあります。
■相談者は経過観察をしています
  月経不順や痛みがないか、腫瘍の大きさなどに注意してください。腫瘍が大きくなれば卵巣の正常部分がそれだけ少なくなるので、もし結婚を控えていれば、妊娠機能を温存しておくために小さいうちに取り除くことを勧めます。 相談者の場合、正常部分を残し、嚢腫部分のみを切除する「嚢腫核出術」が適用されると思われます。主治医とよく相談してください 。

(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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2003
2003.07.07 讀賣新聞

広島の病院医長ら調査
  若い女性の子宮けいがん急増
 10年で4倍 性感染症が一因か

  若い女性の子宮けいがん患者が最近10年で4倍に増加していることが、国立病院呉医療センター(広島県呉市)の藤井恒夫産婦人科医長らの調べでわかった。急増の原因は不明だが、性感染症の増加が一因とみられている。日本産婦人科医会がん対策委員会は、全国的な傾向とみて、子宮がん検診の対象を若年層に拡大する検討を始めた。 藤井医長らは、同センターと広島大病院で1982年以降に子宮けいがんの治療を受けた患者計2071人の年齢を調べた。29歳以下の女性が占める割合は、91年以前は2%だったが、92-96年には6%、97-2001年には8%まで急増していた。6割はごく初期のがんだった。また、過去30年間に同県内で検診を受けた29歳以下の女性約6129人について調べたところ、検診で初期の子宮けいがんが見つかるケースも増加傾向にあった。
  子宮けいがんは、子宮の入り口付近にできるがん。一部の子宮けいがんの発症には、性行為などで感染する「ヒトパピローマウィルス」がかかわっていると言われている。
  ほとんどの自治体は、30歳以上の女性を対象に子宮けいがんの検診を実施しており、20代を対象にした検診を実施している自治体は非常に少ない。
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2003
2003.10.07 中国新聞:くらし
子宮頸がん 若年化傾向
  国立病院呉医療センターの藤井医長ら調査
全体では横ばい・減少傾向にある子宮がん。その一方で、若い女性の子宮頸(けい)がんが、この15年間で3倍に増えていることが、国立病院呉医療センター(呉市)の藤井恒夫・産婦人科医長らの調査で明らかになった。厚生労働省も子宮がん検診の対象年齢を引き下げる方向で検討を始めた。20歳代から子宮がん検診を受けることが大事だ。
(編集委員・山内雅弥)

15年で3倍増   20歳代から検診を  初期には自覚症状なく

  漫画家のときまつさなえさんが開いている「子宮がん体験記」というホームページには、多くの人が手記を寄せている。そこにつづられている子宮頸がんが見つかったきっかけは、さまざまだ。
 流産・死産を経てやっと妊娠した時、不妊治療を始める際の検査、少量の出血が気になっての受診、たまたま受けたがん検診・・・。年齢はいずれも20歳代で、世間でいう「がん年齢」とはほど遠い。ほとんどが自覚症状もなく、「若い自分がまさか、がんなんて・・・」と、その時の驚きと不安がつづられている。

性行為で感染も
  子宮頸がんは、子宮の入り口付近に発生するがんで、子宮がん全体の60%程度を占めているといわれている。性行為などを通じて感染するヒトパピローマウィルス(HPV)が主な原因。初期には自覚症状がないため、子宮がん検診や妊娠時に見つかる場合が多い。
 藤井医長らは、1982-2001年に、同センターと広島大病院で子宮頸がんの治療を受けた女性2071人の初診時年齢を調査。その結果、20歳代の女性は、82-86年の14人(全体の2.0%)から、92-96年に24人(6.2%)、97-01年には41人(8.4%)に増えていることが分かった。
 さらに、広島県健康福祉センターで1975年以降に子宮がん検診を受けた29歳以下の女性6129人のうち、ごく初期の上皮内がんが見つかった人の割合も、75-80年には0.04%だったのが、96-01年には0.28%にアップ。子宮頸がん発症の若年化傾向を裏付けている。
 なぜ、若い女性の間で子宮頸がんが急増しているのか。藤井医長は「性交渉を経験する年齢が低くなったり、性交渉の相手が増える一方、コンドームの使用が減少していることも影響している」とみる。18歳で上皮内がんより進んだ浸潤がんが見つかったケースもあるという。

国が近く検討会
  現在、市町村が実施している子宮がん検診は、30歳以上が対象。29歳以下は含まれていない。このため、日本産婦人科医会は昨年、30歳未満の若年層への子宮がん検診拡大を提言。厚生労働省も近く専門家の検討会を設置して引き下げを検討する。
 欧米では、18-25歳になると子宮がん検診を始め、「セックスを経験した年齢から」としている国もあるほどだ。藤井医長は「20歳代で見つかる子宮頸がんの約6割は早期がん。早く治療すればほとんどが完治し、子宮を温存して妊娠・出産することもできる」と、若い世代の検診受診を呼びかけている。

クリック 子宮頸がん検診
  綿棒などを使って子宮の入り口をこすり、採取した細胞を顕微鏡で見て、異常の有無をチェックする。がん検診の有効性を検討した厚生労働省研究班(久道班)の報告でも、マンモグラフィー併用の乳がん検診、便潜血検査による大腸がん検診と並んで、死亡率減少の効果が最も明確な検診として位置づけられている。
  現行制度では、30歳未満の人が産婦人科などの医療機関で子宮がん検診を受ける場合は自費扱いだが、症状があれば健康保険が適用される。

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2003
日本経済新聞2003年11月20日:女性と健康
婦人科系がん 最新情報(下)
─ 子宮がん、若年層に広がる ─
出産への影響も、背景には性の低年齢化
性の低年齢化にともなって、ウイルス感染から起こる子宮頸(けい)がんの若年化が進み始めた。従来は30代以上の患者が中心だったが、20代で発症するケースが増えている。出産にも影響することから、医療関係者も危機感を強める。国や学会も早期発見へ対策に乗り出した。忍び寄る子宮頸がんとは 。

  「残念ですが、子宮頸がんが見つかりました」。西日本に住む会社員のAさん(27)は医師の言葉に耳を疑った。たまたま、長年悩んでいた生理不順治療のため、昨年思い切って門をたたいた産婦人科で、医師のすすめで検査を受けたときのことだ。
  見つかったのはごく早期の上皮内がんだった。Aさんは、その後患部を削り取る手術を受け、現在は経過を観察している最中。だが、「今後、ちゃんと子どもを産めるのか、再発しないか心配」と不安げに語る。
  一昨年、子宮頸がんとわかった都内在住の主婦、Bさん(29)は、「まだ若い自分が、まさかがんだなんて信じられなかった」と振り返る。発見のきっかけは妊婦検診。妊娠3ヵ月時点で告知を受けた。
  Bさんは、医師の診断で出産後に手術をし、今は健康に暮らしている。しかし、妊娠中は「自分より、子どもの命が助かるかどうかが気になって、不安で不安でたまらなかった」。

  子宮がんは、子宮の入り口付近にがんができる子宮頸がんと、その奥の子宮体部と呼ばれる部分にがん細胞が発生する子宮体がんに分けられる。子宮がん全体の死亡率は医療技術の進歩などにより、減少傾向にある。
  だが、子宮頸がんは近年、20代患者が増加しており、深刻な問題になりつつある。
  国立病院呉医療センターの藤井恒夫・産婦人科医長らは、1982年から2001年にかけて同センターと広島大病院で子宮頸がんの治療を受けた女性的2070人の初診時年齢を調査。その結果、20歳代の女性患者は82年-86年の14人(全体の2.0%)から、92-96年には24人(6.2%)、97-2001年には41人(8.4%)に増加した。
  子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が主な原因とされ、主に性交渉で感染する。良性と悪性があるが、どちらも大半の人は自然に治る。ただ、悪性ウイルスに感染した一部の人が数年後にがんを発症する危険性があり「性体験の低年齢化や性交渉の相手が増える一方で、コンドームの使用が減少していることも関与している」と藤井医長はみている。
 
  若年層への広がりは、子どもを持つか持たないかといった生活設計にも大きな影響を与える。それだけに、患者の悩みも深い。
  都内に住むCさん(32)は3年前、妊娠時の検査でがんと判明した。かかりつけ医からは出産後に子宮全体を摘出するようすすめられた。「最も安全な方法」と説明されたが、他の病院で受診すると、初期のがんだったため、患部のみを切除する手術だけで済んだ。
  「たとえ、もう子どもを生むつもりがなくても、子宮を失ってしまうことには強い抵抗感があった。何も知らぬまま全摘していたら、と思うといまでもぞっとする」とCさんは話す。
  こうした医療現場の対応や患者の心理について、患者団体「子宮・卵巣がんのサポートグループ あいあい」を主宰するフリーライターのまつばらけいさんは、「医療機関によって治療法にばらつきがあったり、温存できるはずの人が子宮を全摘されたりしている。若年化が進むなかで、大きな問題」と警鐘を鳴らす。
 
  こうしたなか、厚生労働省では市町村が実施するがん検診のあり方について来月にも専門家の検討会を発足させる。子宮頸がん検診の受診年齢を20代へ引き下げるガイドラインを作成する。自治体が行うがん検診は29歳以下は含まれていなかったが、来年度にも年齢を引き下げる。
  日本産科婦人科学会では、今春から全国規模の子宮頸がんの実態調査を開始。全国の大学付属病院、がんセンターなどに協力を求め、HPVと子宮頸がんの因果関係などを確かめる。
  同学会の婦人科腫瘍委員会小委員会長を務める河野一郎・川崎医科大教授は「子宮頸がんは早期発見・早期治療さえできれば、ほかのがんに比べても治癒率が高い。ただ、検診の充実だけでなく、子どもに対する性教育や性感染症対策の充実が急務」と訴える。

欧米では20代の検診定着

  欧米では子宮頸がん検診は20代から受診するのが常識となっている。米国の実情に詳しい和歌山医科大学の梅咲直彦教授によると、例えば、米国がん協会ではすでに80年代には受診のガイドラインを作成。2002年時点では21歳以上か、初体験から3年を経過した女性に検診を勧めている。また、主原因とされるHPV検出検査も盛んに行われている。
  日本では自治体が実施する子宮頸がんの受診率は、2001年度で14.7%。しかし、職場検診などで受けている女性もおり、実態はつかめていないのが実情だ。
  ただ、子宮頸がん検診は子宮体がん検診などに比べ、検査手法が確立されており、精度も高いため、女性自身の積極的な受診が望まれる。

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2004
2004.07.07 中国新聞:気になる症状
『火照りやフワフワ感』・・・
  心理的要因の可能性も
4年前から、立っているとフラフラし、火照り、歩いているとフワフワしたりと、いろいろな症状があります。異常な発汗もあり、特に緊張した場合や体調が悪いときに症状が出ます。内科や耳鼻科に通いましたが改善されず悩んでいます。18歳の時、卵巣嚢腫で右の卵巣を摘出しましたが、きちんと月経はあり、昨年出産しました。
(広島県安芸郡・女性・29歳)
■フラフラしたり、火照りなどがあるようです
  火照りやフワフワ感、発汗のどの症状は典型的な更年期障害の症状で、一見すると、同障害のように感じます。 しかし、片側の卵巣を摘出されているものの、昨年出産されており、月経も順調であることから、もう片方の卵巣はきちんと機能しているようです。従って、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少が原因ではなさそうです。
  その一方、緊張したときに症状が表れるなど、心因的な要素が感じられるため、自律神経失調症の可能性が考えられます。更年期障害も一種の自律神経失調症です。
■相談者はまだお若いですが
  一般的に更年期障害は、閉経の前後10年間、だいたい45-55歳の間に起きる急激な女性ホルモンの低下によって症状が出ます。
  しかし、ある調査では、更年期障害の症状を訴えた40歳未満の若年者のうち約半数は、女性ホルモンであるエストロゲンの血中濃度が1ml(ミリリットル)あたり50-60pg(ピコグラム)と通常の範囲内でした。ホルモンレベルの低下が見られないのに更年期障害の症状を訴える人があり、ホルモンレベルだけでは説明できないケースも多々あります。
  女性ホルモンの低下以外の原因としては、不安や悩みといった心理的な要因、生活環境的な要因などが複雑に絡んでいるようです。
  通常、更年期障害の診断は、検査で心疾患や高血圧、甲状腺疾患といった他の病気でないことを確認します。そのうえで自己チェック表を使った更年期指数や血中エストロゲン検査、心理テストなどで判断します。 自己チェック表の表示
■相談者はどうすればよいでしょうか
  卵巣機能が十分でホルモンレベルの面から問題が起きているとは考えにくく、以前手術を受けたことなどが心理的に影響しているのではないかと思われます。また、出産前後は「マタニティーブルー」といった心理状態に陥ることも考えられます。こういった場合、原因になっていると思われる心配ごとを解消したり、生活環境を変えることで症状が改善することもあります。婦人科などの専門医にご相談されることをお勧めします 。
(回 答 者:藤井 恒夫医師)
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2006
2006.12.13 中国新聞:この病気 この治療
   子宮内膜症とは
若い女性を中心に、子宮内膜症が増えている。月経がある女性の5―10%にみられるとの推定数値もある。不妊の原因になったり、卵巣がんに進行したりする場合があるだけに、油断は禁物だ。日本婦人科腫瘍学会暫定指導医でもある藤井レディースクリニック(広島市中区)の藤井恒夫院長(57)に聞いた。
(編集委員・山内雅弥)

   子宮外で周期的出血
   月経を止め改善図る

■子宮の病気ですか
  一言で言えば、月経のような出血が、子宮以外の場所で起こる病気。月経の時に子宮の内側からはがれ落ちる子宮内膜に似た組織が、腹膜や卵巣、卵管、直腸などの表面に存在して、周期的に出血を繰り返すことで、炎症や癒着を引き起こす。原因はよく分かっていないが、女性ホルモンが大きな影響を及ぼしていると考えられている。

気付かない場合も


■自覚症状は
  よく見られるのは、月経の度に強くなっていく月経痛。月経と関係なく下腹部や腰の痛みが続いたり、性交時や排便時にもひどい痛みが起きたりする。このほか月経の量が非常に多い月経過多や不正出血も伴いやすい。ほとんど自覚症状がなく、気付かない場合も少なくない。  
■不妊になりやすいといわれます
  卵管が癒着すると、排卵された卵子がうまく取り込めなくなる。卵巣に血液がたまる場合は、卵胞の発育がしにくくなると考えられている。検査で原因が分からない「機能性不妊」の5―33%が子宮内膜症を合併する一方、子宮内膜症の女性の30―40%が不妊という報告もある。

通常は内診で確認

■腹腔鏡で検査しなければいけませんか
  すべての患者に腹腔鏡検査が必要というわけではない。通常は問診の後、内診で子宮の後ろ側にある直腸との間の部分に、腫れやしこり、痛む場所がないかを調べる。さらに超音波検査と磁気共鳴画像診断装置(MRI)による検査で、臨床的に診断している。癒着が疑われるケースや、長期間不妊が続くなど確定診断が必要な場合は、腹腔鏡検査が必要になる。  
■治療法はどのように
  薬物療法と手術療法(開腹手術、腹腔鏡手術)がある。子宮内膜症は女性ホルモンによって進行するので、痛みがあまりひどくない場合は、まず薬で月経を止め、子宮内膜を萎縮させて症状改善を図る。進行期分類(T―W期)でV期以上は手術が必要な場合が多い。腹腔鏡を使った保存手術は妊娠が可能な半面、将来の再発もありうる。症状や妊娠希望の有無、年齢などを総合しながら、治療を選択する。

ピルで痛みを緩和

■薬の副作用は大丈夫ですか
  薬物療法では従来、男性ホルモンに似た作用のダナゾールが使われてきた。最近では、点鼻スプレーや注射で脳下垂体の働きを抑えて、一時的な閉経状態にする「GnRHアゴニスト剤」が主流。ただ、更年期症状や骨粗しょう症の副作用があり、通常の治療期間は四―六カ月間だ。  避妊薬のピルには、妊娠中のようなホルモン状態にして痛みを和らげる働きがあり、欧米では子宮内膜症の治療によく使われている。GnRHアゴニスト剤は保険適応だが、月一万円程度の自己負担がかかる。ピルは保険外でも比較的安い。  
■子宮内膜症からがんに進む心配は
  子宮内膜症は良性の慢性疾患であり、多くが閉経後に自然に治る。しかし、卵巣に古い血液がたまる卵巣チョコレート嚢胞がある場合、主として四十歳代後半から閉経前後にかけ、百―二百人に一人くらいの頻度で卵巣がんになる例がある。がん化のスピードは不明だが、定期的に受診していれば、早期に見つかることが多い。
チョコレート嚢胞がある人は閉経二、三年後まで半年に一度は、婦人科専門医の検診を受けるようお勧めしたい。
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2007
2007.1.10 中国新聞:この病気 この治療
   「子宮内膜症」 Q&A特集
2006年12月13日の中国新聞「くらし」面の「この病気 この治療」というコーナーで取り上げた「子宮内膜症」に対する質問や相談について、藤井レディースクリニック(広島市中区)の藤井恒夫院長に回答してもらった。
(編集委員・山内雅弥)

〈問い〉2002年ごろに急激な腹部の痛みと腰の痛みで子宮内膜症といわれ、三カ月間ホルモン注射を受けました。2005年8月に一カ月ピルを服用し、妊娠しやすい体づくりに取り組みました。子どもを授かりたいのですが。(広島市安佐南区・32歳)


〈答え〉子宮内膜症の薬物治療後、一年以上自然妊娠がないようです。避妊していないカップルが一年間に妊娠する確率は約90%。残りの10%の中には全く正常なカップルも含まれていますが、一年間妊娠しないカップルには何か妊娠しにくい原因が隠れていることが考えられます。子宮内膜症も含めて、専門医の受診を勧めます。

〈問い〉第一子の妊娠で産婦人科を受診した二十七歳の時、チョコレート嚢腫を指摘されました。出産後は生理痛もなくなりました。半年に一度、検診を受けていますが、将来がんになる可能性があるといわれ、心配です。今の検診でいいか、手術や日常生活の注意を教えてください。(広島市安佐南区・31歳)

〈答え〉悪性転化は、超音波所見(急激なサイズの増大、壁の不整化、内部の充実部分の出現など)、MRI(CT)所見、腫瘍マーカー CA125値を総合して診断します。卵巣を全摘すれば、リスクはゼロになりますが、卵巣の健常部を温存する保存手術は将来の再発、がん化の可能性があり、六ヶ月ごとの定期健診が必要です。週に二時間以上運動すれば、エストロゲンが減少し、子宮内膜症の抑制効果があるといわれています。

〈問い〉結婚して二年目の嫁が昨年四月、チョコレート嚢腫の腹腔鏡手術を受けました。がんではなかったのですが、妊娠や再発のことで悩んでいるようです。どうしてやればいいでしょうか。(福山市・56歳)

〈答え〉腹腔鏡手術は妊娠の可能性を温存させるのが目的なので、妊娠率の改善が期待されます。主治医に相談して適切な妊娠指導を受けてください。再発については、内膜症治療後一年を越えると再発率が高くなるとの報告もあります。重度の卵巣・卵管癒着がある場合は体外受精などの高度生殖医療が必要です。

〈問い〉二十一歳の娘が昨年四月、生理時に立っていられないほどの激痛があり、子宮内膜症と診断されました。以来、ピルの服用を続けていますが、副作用の心配や妊娠時の胎児への影響はないのでしょうか。(広島県安芸郡・47歳)

〈答え〉
ピル服用中も六カ月ごとに内膜症の検診を受けてください。症状は改善しても病巣は存続し、手術が必要になるケースもあるからです。ピルの副作用は少ないものの、長期服用する場合は肝機能障害、血液凝固異常など全身的な副作用について定期検査が必要。ピル服用中止後に妊娠した場合、胎児への影響はありません。一般的には、二十歳代は内膜症の発生しやすい時期ですが、結婚・出産・授乳は内膜症の発生を予防し、また病巣には治癒の方向に働くとされています。

〈問い〉先日、検診に行って「子宮が大きい」といわれ、子宮内膜症と診断されました。不正出血はありません。なぜ子宮が大きくなり、症状が進むとどうなるのか、気をつけることを教えてください。(広島県世羅郡・45歳)

〈答え〉
病巣が膨らんで子宮が大きくなるのは、子宮の筋肉(平滑筋)の中に内膜症が発生する子宮腺筋症です。病巣の深さと広がりの程度により進行度が評価されます。重症例では子宮・卵巣・卵管と隣接する直腸・骨盤腹膜が癒合して一塊となります。予防法としては、毎日の運動やピルの長期服用をお薦めします。

〈問い〉一昨年、貧血で受診した婦人科で子宮筋腫と診断され、子宮を摘出する手術を受けましたが、術後に子宮腺筋症だったことが分かりました。残った卵巣や卵管ががんになると、出血などの兆候があるのですか。(井原市・48歳)

〈答え〉
子宮腺筋症の摘出手術で温存した卵巣・卵管に、将来、子宮内膜症が生じても出血を自覚することはありません。ただ、痛みの出現が再発のサインになることがあります。手術時に温存した卵巣・卵管に子宮内膜症の遺残(残存)や再発が疑われる場合は、内診と超音波検査による定期検診を勧めます。

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2007
2007.5.30 中国新聞:健康・医療
   子宮頸がん 20代から検診を
27日に転落死した、人気ポップスグループZARDの坂井泉水さん(40)が闘っていた子宮頸がん(浸潤がん)。「がん年齢」といわれる40歳以前でも発症は珍しくない。ただ、早期発見すれば、ほぼ100%治るだけに、20歳を過ぎたら定期的な検診の受診を忘れないようにしたい。
(編集委員・山内雅弥)

ZARD坂井さんも闘病

所属事務所などによると、坂井さんは昨年6月、子宮頸がんと分かって、全摘手術。一時は快方に向かっていたが、肺への転移が見つかり、今年4月に再入院して放射線や抗がん剤の治療を受けていたという。

30代発症ピーク 少ない自覚症状
日本で低い受診率
  一般的には、子宮の入り口にできる子宮頸がんは、性交渉などを通じて広がるヒトパピローマウィルス(HPV)の持続感染が主な原因。初期には、ほとんどが自覚症状がなく、妊娠時などに偶然、見つかることも多い。
  2005年度に全国で子宮頸がんと診断された患者4850人を年代別にみると、最も多いのは50歳代(22.5%)と40歳代(22.3%)。30歳代の18.9%が次ぐ。
  「ごく初期の上皮内がんを含めれば、今や30歳代が子宮頸がん発症のピーク」。日本婦人科腫瘍学会暫定指導医でもある藤井レディースクリニック(広島市中区)の藤井恒夫院長は指摘する。
  自覚症状が少ないだけに、検診(細胞診)が早期発見の鍵だ。市町村の頸がん検診は20歳以上であれば二年に一回受けられる。しかし、受診率は広島市の場合で12.3%(06年度)。米国の80%と比べ、日本は際立って低い。

早期発見なら完治

  腺がんと呼ばれる一部のがんを除くと、子宮頸がんの大半はゆっくり進行。このため、早期であれば手術やレーザー治療で完治が見込め、子宮を温存することもできるようになっている。
  「治療が難しいタイプもあるものの、毎年受診していれば、まず命を落とすことはない」と藤井院長。検診は、性交渉経験後二、三年たったら、まず一度。三年続けて異常がなければ一年おきでもいい。もし不正出血があればすぐ婦人科へーとアドバイスしている。
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藤井レディースクリニック (産婦人科・内科)
電話:082-241-2410 (フジイ−フジイレディース
広島市中区紙屋町2丁目2番6号紙屋町イワミビル4階
(広銀本店対面・ケンタッキーフライドチキン隣り)
http://www.fujii-ladies-clinic.jp
mail : fujii-lady-clin@kvp.biglobe.ne.jp

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